秋田市文化創造館

レポート

2026.07.30

難民ウィーク2026 トークイベント

難民ウィークから考える
プロジェクトと制作のお話し

2026年6月、秋田県内では初開催となる「Refugee Week Japan 難民ウィーク」が秋田市文化創造館で開催されました。主催は、キュレーター・池上朋さん、アーティスト・是恒さくらさんらによるRefugee Week Japan実行委員会です。

このイベントは、秋田市文化創造館の減免制度対象事業(テーマ「秋田市の国際交流・国際理解」)として採択され、当館の協力のもと開催されました。当館では「市民の想像力を養う学びの場を創出する」ことを運営方針の一つとしており、本イベントもその趣旨に沿う取り組みとして実施されました。

本記事では、6月15日開催のトークイベントの様子をお届けします。

トーク実施中の会場風景
登壇者右:池上朋さん、左:是恒さくらさん

日時|2026年6月15日(月)19:00~20:15
会場|秋田市文化創造館 1階 コミュニティスペース
主催|Refugee Week Japan実行委員会(池上朋、是恒さくら、丑田由美)
協力|秋田市文化創造館(減免制度対象事業)

▶︎イベント概要・登壇者プロフィールはこちら


6月15日に開催されたトークイベントには、Refugee Week Japan実行委員会のキュレーター・池上朋さんとアーティスト・是恒さくらさんが登壇し、「Refugee Week (以下、難民ウィークと言います。)」を起点に、それぞれの活動について紹介しました。

前半|池上朋さんのお話し

前半は、「難民ウィーク」の開催を国内で精力的に推進している池上さんからのお話。

池上さんはこれまで美術館で教育普及や地域連携に携わってきました。ベトナムにルーツを持つ人々が多く暮らす群馬県前橋市の「アーツ前橋」では、移民や地域との関わりについて考え、実践を重ねました。その後、イギリス・ロンドンで芸術と難民支援を結ぶ活動を行う団体「Counterpoints Arts」での1年間の研修を経験。そこで出会った「難民ウィーク」を広めようと、2025年に日本で「Refugee Week Japan」を立ち上げました。

イラスト:クラーク志織

難民ウィークは、世界難民の日(6月20日)にあわせて行われる、難民や移民と地域の人々が文化や芸術を通じて出会い、交流するためのアートフェスティバルです。イギリスでは美術館や図書館、映画館、カフェなどさまざまな場所でイベントが開催されており、現在では世界20か国以上にその取り組みが広がっています。

池上さんは、「難民という言葉を、ネガティブなイメージだけでなく、多様な文化や創造性をもたらすポジティブなものとして捉え直したい」と語ります。活動を一度きりで終わらせず、全国各地で継続的に小さな取り組みが生まれ、それらがつながっていくことの大切さや可能性についても伝えてくれました。

難民ウィークへの参加方法はとてもシンプルで、誰でも気軽に参加できるといいます。「まず行動してみること」が何より大切だと池上さんは語ります。期間中に読書会や映画上映会、食事会など、自分たちでやってみたい企画を開けば、それが難民ウィークのイベントになります。Refugee Week Japanのロゴやハッシュタグを添えて発信すれば、公式ウェブサイトやSNSでも紹介され、全国の取り組みがつながります。

▶︎もっと詳しい難民ウィークへの参加方法はこちら

ロンドンでは、期間中に仮装をして24時間マラソンに挑戦した人にも出会ったそうです。実際にやってみた感想を聞くと、「とにかく楽しかった!」という答えが返ってきたそうです。そうした軽いノリであっても、とにかくやってみることが重要だと池上さんは話しました。

オープンな場所で、個人でもグループでも実施したことが、複数の場所で同時に行われ、それが大きな力になっていく。そうして「誰もが気軽に参加できれば、アートという分野だけでなく、いろんな場所へ広がっていく仕組みが作れるはず」。

池上さんのお話しからは、難民や移民を難しい問題として捉え、正解を求めようとするのではなく、「とにかく行動をして考えていく」ことの大切さが伝わってきました。そして、実際にイベントを行うことを通して、人と人が出会い、さまざまなバックグラウンドやルーツを持つ人たちが互いを知るきっかけを生み出したい。そのための身近な入り口として「難民ウィーク」を広げていきたい、という思いも感じられました。

後半|是恒さくらさんのお話し

トーク後半では、今年の春から秋田を拠点にしているアーティストの是恒さくらさんが、自身の創作活動と「故郷」について語りました。

是恒さんは、アラスカ大学への進学をきっかけに、長年にわたりクジラと人との関わりをテーマに制作を続けています。捕鯨文化が残る世界各地を訪ねながら、文章、刺繍作品、そしてインスタレーション作品を発表してきました。

アラスカ在住時には先住民ルーツの学生たちが身近に多く、ある同級生から「あなたは日本人だからクジラが好きだよね」と言われて、お皿に山盛りのクジラ肉を分けてもらったことが忘れられない体験となったそうです。捕鯨を巡る対立的な議論も少なくない中、在学中の経験を通して、国というくくりではなく、「海がつなぐ一人ひとりの暮らしや文化のネットワークに目を向けたい」と考えるようになったといいます。クジラは人々を分断する存在ではなく、海を越えて異なる文化を結び付ける存在でもある——この視点が、今の活動のベースになっています。

さらに、ブラジルの日系移民の親族との交流も紹介されました。親族を訪ねてサンパウロに滞在し、家族と食卓を囲む中で、親戚から「サウダージ(saudade)」という言葉を教わったといいます。

一般には「郷愁」などと訳されることの多い言葉ですが、叔父は「日本に帰れば、きっとブラジルが懐かしくなる。その気持ちがサウダージだよ」と伝えてくれたそうです。この言葉から是恒さんは、サウダージは手の届かない場所を表すのではなく、人生の中で増えていくものだと感じたといいます。

各地での経験を振り返りながら、「故郷は一つではなく、人との出会いによって増えていくもの。遠くの土地や、そこに暮らす人を思う気持ちを分け合うことが大切なのではないか」と是恒さんは語りました。

質問タイム

最後に質問の時間が設けられました。参加された市民の方々からは、「新しい活動を行うには、どういったことから始めるとよいか」「現在実施しているイベントに外国人の方々にも参加してもらいたい」などの質問が寄せられました。池上さんは活動立ち上げのはじめに助成金を探したエピソードや「まずは目の前の人に参加を呼びかけてみることが大切」と応え、是恒さんも自身の経験を交えながら、人との出会いを重ねてコミュニティの輪を広げていくことの意義について語りました。

質問に答える池上さん(右)、是恒さん(左)

池上さんと是恒さんはそれぞれ異なる活動を紹介しながらも、《まずは人と出会い、小さな行動を始めてみることが大切》という共通したメッセージを伝えてくれたように思います。

お二人のお話しから、参加者一人ひとりが難民ウィークの理念を身近なものとして感じられる時間となったのではないでしょうか。

◆難民ウィークに参加するにはどうすればよいの?

「難民ウィーク」は、地域の人たちで一緒に作るアートフェスティバルです。特別な誰かがつくるイベントではありません。参加する一人ひとりの小さな行動が集まって生まれます。

やり方に決まった形はありません。

一人でも、グループでも、組織でも、準備に5分しかかけられなくても、5か月かけられても、どのような形であっても、すべての行動が大切です。

Refugee Week Japan 「参加する | TAKE PART」より

Refugee Week Japan公式ウェブサイトで紹介されている5つのステップで、このフェスティバルに参加できます。

来年の「難民ウィーク」に、あなたも参加してみませんか?

編集|秋田市文化創造館