イベント レポート
「フリー・オープン・デイ 2026」
日時|2026年5月5日(火・祝)
会場|秋田市文化創造館、あきた芸術劇場ミルハス、
秋田市にぎわい交流館AU、秋田市立中央図書館明徳館

2026年5月5日(火・祝)、秋田市文化創造館、あきた芸術劇場ミルハス、秋田市にぎわい交流館AU、秋田市立中央図書館明徳館の4施設が連携し、千秋公園・なかいちエリアを巡りながら楽しめるイベント「フリー・オープン・デイ 2026」を開催しました。
当日の様子を、秋田市立千秋美術館 学芸員・菅沼楓さんのレポートでお届けします。
5月5日(火・祝)こどもの日に、「フリー・オープン・デイ 2026」に出かけました。会場近くに到着したのはお昼過ぎ。曇り空で風も吹き、少し肌寒い日でしたが、お昼時ということもあってか、人通りは多く、あちこちから賑やかな声が聞こえてきます。
車をなかいちに駐車し、ベーカリー工房GRISSINIさんを覗くと、土日祝限定で販売している、千秋美術館で開催中の「tupera tuperaの キニナル アニマル 絵本原画展」(~7/5まで開催中)とのコラボパンは好評につき売り切れの様子。会期中にぜひ食べてみたいと思いながら、お堀のほうへと向かいます。

イベントを主催する4館が集まる、千秋公園・なかいちエリアは、幼少時から度々訪れていた馴染みある場所です。進学と就職で秋田を離れていた10年の間に整備事業が進められていたことは耳にしていましたが、改めて現地を歩くと、同じ場所、同じ建物の位置関係のはずなのに違う景色が広がっていることに不思議な気分になります。
以前は周りが木に囲まれ、建物全体を中土橋通りからは見ることができなかった旧秋田県立美術館(現在の文化創造館)と、建物前の急な傾斜が印象深かった秋田県民会館・ジョイナス(現在のあきた芸術劇場ミルハス)。この2つの場所が今やシームレスに繋がっていることを、昔の私は想像できたでしょうか。以前の風景も思い出深く忘れがたいものですが、現在のすっきりと見晴らしの良い景色には、より開放的な雰囲気を感じます。

最初に訪れた文化創造館では、55組の“表現者”による「チャレンジマーケット」を開催していました。今回で5回目の開催となるそうですが、私はこれまで参加したことがありません。
あえて表現者という言葉が使われている意図はどこにあるのか、どのようなチャレンジが繰り広げられているのかを楽しみにしていました。
さっそく2階の会場にあがると、踊り場のスペースでは、あきた牧場さんによる羊毛の展示と糸紡ぎ体験(協力:工房ぬくもり)が行われていました。手芸屋さんで見るものよりずっしりと重く、密度が高い羊毛。その横の糸紡ぎ体験では、小さい子どもが楽しそうに糸車を回していました。午前中には、屋外で羊毛狩りの実演も行われていたそうです。

会場に入ると、縞々のブロックが積み重なっているように見える不思議な造形が目を引きました。

サトウミツコさんによる「ボロ家」の展示です。身の回りにある使われなくなった布を重ねて固めているそうで、確かによく見ると、どこか懐かしい柄の布が幾重にも積み重ねられていて、まるで布の地層のようにも見えてきます。
全日本薮本積穂俳画協会 秋田教室さんのブースでは、俳画の紹介と展示が行われていました。俳画とは、俳句の心を絵にするもの。筆数が少なく、シンプルでありながら、味わいのある絵が魅力です。上手下手は問わない、自由に気軽に始められる、という敷居の低さも俳画の親しみやすいところなのだそう。紹介されていた作品のように、さらりと季節に合わせた絵が描けたら楽しいだろうと想像が膨らみます。
また、こどもの日ということもあるのか、会場では子どもたちの姿も多く見かけました。各ブースのワークショップにも熱心に取り組んでおり、会場全体がにぎやかな雰囲気に包まれていました。


高校の調理部によるお菓子販売や、オリジナルのキャラクターグッズの販売、アートメイク体験やセラピー、演劇相談のブースなど、多彩で個性的な出展も目立ちます。確かに単なる「出店者」という言葉よりも、それぞれの熱量を思い思いの形で発信している「表現者」によるイベントというのがしっくりときます。予想外のチャレンジがまだまだ繰り広げられていそうですが、見ていないブースは後に回ることにして、いったん会場を離れます。




お隣のあきた芸術劇場ミルハスへ向かいます。
最初のお目当ては、中ホールで開催された「バックステージツアー」。普段立ち入ることのできない舞台上や楽屋などを見学できるとあって、楽しみにしていたイベントです。
職員さんの解説のもと、まずはそれぞれのホールの特徴や、照明・音響の仕事について実演を交えながら説明を聞きます。プロフェッショナルなスタッフさんたちの技術によって舞台が支えられていることを実感しました。

後半は、これまでに数々の著名人が立ってきたステージ上へ。音楽に合わせた舞台照明のデモンストレーションを体験し、さらにその裏手にある楽屋を見学しました。楽屋のネームプレートには秋田の伝統工芸である樺細工が取り入れられているのを発見。出演者が過ごす楽屋にも秋田ならではの意匠が施されていることを知ります。表舞台だけでなく、裏側にも細やかなこだわりが詰まっていることを感じながら、大満足でツアーを終えました。


お隣にある大ホールに入ると「ピアノマラソン」の真最中でした。一般公募で集まった28組の出演者がリレー形式で演奏を繋いでいました。確かに、中ホールと比べると、こちらの大ホールはより豊かな響きで音が伝わってきます。照明の設備も違うのかな?と、さっそく先ほどのツアーで得た視点をもとに、すみずみまでホールを観察。大ホールの裏側にも興味が湧きます。

4階の小ホールAでは「みるはす美術館」が開催中。文化創造館1階に展開されていた工作スペース「ソウゾウカンラボ」で作られた作品たちが、美術館ではおなじみの白い展示台の上に、手書きのキャプションとともに展示されていました。空き箱やトレーなどで作られた動物や怪獣、踏切、おうちなど、自由な発想から生まれた作品たちはどれもユニークで個性豊か。それらをみていると、身の回りにはたくさんの素材があふれていて、ちょっとしたアイデアと組み合わせ次第で何にでも生まれ変わるのだと気づかされます。


続いて1階ロビーで行われていた「ミルミルマルシェ!」へ。食べ物やドリンク、ハンドメイド作品の店など県内外から60の店舗が集まっていました。少し喉が渇いたので飲み物を探していると、美味しそうなラ・フランスジュースが目に留まります。山形県東根市の「なかのふぁ~む」さんのジュースは、砂糖を使っていないとは思えないほど濃厚で、自然な甘みが体にじわっと染みわたりました。

ジュースを片手に地下1階の小ホールBへ行くと、「ジャズ喫茶ミルハス」がオープンしていました。会場内やマルシェで購入したドリンクやフードを楽しみながら、本格的なジャズ演奏を味わえる空間となっていて、今回が初めての取り組みだそうです。午後の回には、ジャズボーカル&ギターユニットの「HARUMI&RICARD」さんが出演。HARUMIさんの透き通るような歌声と、RICARDさんのギターの音色が会場を心地よく包み、お客さんたちも思い思いに音楽に耳を傾けていました。

イベント盛りだくさんのミルハスを後にして、屋外のマルシェを見ながら中央図書館明徳館へ向かいました。建物前には「移動図書館イソップ号」が登場しています。約2,500冊の本を積んで秋田市内を巡回する移動図書館車で、存在は知っていましたが実際の車を見るのはこれがはじめて。その可愛らしい見た目から、子ども向けの本が多いのかな?と思っていましたが、年代問わず幅広いジャンルの本が選書されていました。車内には、千秋美術館のtupera tupera展のチラシも置いてくださっていました。図書館内での連携展示(※5/17で終了)も含め、こうして館の垣根を越えて一緒に展覧会を盛り上げていただけるのは、心強い限りです。


図書館を出て中土橋通りを歩いていると、なかいちの方から楽しい音楽が聞こえてきます。にぎわい交流館AU前のガラス屋根下に設置されたステージでは、AUのスタジオをよく利用している5組のアーティストによるライブイベントを開催していました。ちょうど演奏していたのは、シンガーソングライターの近藤馬之助さんとパーカッションのHisHomeHelperさんによる音楽ユニット。パワフルな歌声とギター、心地よいカホンのリズム。そして演奏していたオリジナル曲は、どれも秀逸なものばかり。つい口ずさんでしまいそうな、ポップなメロディと楽しいフレーズに、会場に集まった人たちも自然と笑顔になっていました。

最後に、もう一度文化創造館に戻り、チャレンジマーケットの見逃していたブースを回ります。せっかくなので、何か私もチャレンジをしてみようと、秋田市創作サークル【Crescendo】さんのブースで、オリジナルポーチ作りに挑戦!真っ白な布に絵の具で好きな模様を描いていきます。
手を動かしていると、どこからか楽しげな音楽が。酒泡酒泡クラブさんによる、盆踊りが始まっていました。
さらには、布を縫い合わせた衣装をまといながら、床を這いつくばるようにゆっくり動いていく人影も。ちばちっちとかいぽんさんによる自作の衣装をまとった身体表現のパフォーマンスでした。


多種多様なチャレンジがクロスオーバーしていたチャレンジマーケットは、完成された作品や活動だけでなく、何かをはじめたい、挑戦してみたいという気持ちも受け入れている、温かくも刺激ある空間でした。


とても半日では到底回りきれないほど、多彩な催しが各所で展開されていた「フリー・オープン・デイ」。4館を歩いて巡ることで、各館の得意分野を感じながら、「他の場所でも何か楽しいことが行われているのかもしれない」と興味がつながり、より相乗的に楽しむことができました。
千秋公園・なかいちエリアには、ほかにも千秋美術館をはじめ、県立美術館や佐竹史料館など、多様な文化施設が徒歩圏内に集まっています。たとえひとつの場所を目的に訪れたとしても、周りを歩いているうちに、別の催しや企画、人の集まりがふと目に入ってくる。そうした出会いを素直に面白がってみることが、このエリアならではの楽しみ方のひとつなのかもしれません。そして、この場所にある美術館の一員としても、街の楽しみ方につながるような活動を続けていきたいと感じた1日でした。

Profile

菅沼楓(秋田市立千秋美術館 学芸員)
1995年秋田県大仙市(旧中仙町)生まれ。新潟市美術館を経て、2025年4月より秋田市立千秋美術館で勤務しています。専門は日本近世絵画史ですが、土地と美術の関わりにも関心を持っています。今年度は、コレクション展「街の姿に何をみる?」(会期:2027年1月8日~2月7日)を担当予定です。
▶︎「フリー・オープン・デイ 2026」については こちら
記録写真:伊藤 靖史(Creative Peg Works)、照井優芽