秋田市文化創造館

レポート

「SPACE LABO 2021」臼井仁美さん滞在レポート

2022.3.16

クリエイティブな視点でまちなかを活用するプランを考える公募「SPACE LABO 2021」。1月下旬から、二次審査を通過したクリエイター5名が秋田市中心市街地に滞在し、リサーチやワークショップなどの活動を行いました。今回は臼井仁美さんの滞在をレポートします。

クリエイターの皆さんは、この滞在での経験をふまえて「まちなか活動プラン」を作成。3月21日(月・祝)に開催の公開プレゼンを経て選ばれた1〜2名が、春以降にプランを実施します。

2月23日(水・祝)
秋田到着

東京から新幹線で、午後3時に秋田駅に到着。
今回は、秋田の暮らしの中にある”原木”を見つけること。そして、「ケズリカケ」というキーワードを軸に職人さんのお話を聞くこと。大きくこの2つの目的を軸に滞在を計画しました。

まずは、秋田県立美術館で藤田嗣治の《秋田の行事》を観たり、文化創造館の周辺を散策。

「秋田は雪が積もってると思うので、リュックで行きます」と渡航前におっしゃっていた臼井さん。
市内の散策もしたいので、、、と、この日は、約40分ほどある宿まで雪道を歩いて帰られました。

2月24日(木)
市内の文化財散策・赤れんが郷土館・交流会

朝から市内の文化財を巡りました。那波紙店→藤さんのアトリエ→赤れんが郷土館→かおる堂→高砂堂。

気になったお店にも立ち寄りながら、各店舗の包装紙集め。
並べてみると、お店ごとのこだわりやその土地ならではの郷土が見えて面白い。

美術家・藤浩志さんがアトリエ兼住居にしている、明治30年ごろに建てられた蔵付き住居の見学へ。

リノベーションしながら使用しているアトリエは、藤さん仕様にカスタマイズされているけれど、建物の風貌や建具はかつてのまま。屋根裏や倉庫には、前の住人が残しているものなどがあり、過去の住人の痕跡をたどります。

その中で臼井さんが見ているのは、建物や家具の構造と素材。中でも木の素材を目で見たり触ったりしながら確認しているようでした。

(右)案内してくださる藤浩志さん
建物の素材やモノを観察する臼井さん

その後、勝平得之の版画を見るために赤れんが郷土館へ。

勝平得之(1904〜1970年)は、秋田の木版画家。当時の秋田の風景や自然・風俗を数多く描いており、「ほんでぎ棒売ノ図」と「ボンデンコ」のことも描いています。 

その日見たこと聞いたことを絵と文字で記録している臼井さん(臼井さんのノートより)

夕方、同じく滞在している椎木彩子さんとの合同交流会を開催。

交流会の1時間ほど前に文化創造館に戻って来た臼井さんは、「ちょっと加工してみようと思います。」とつぶやき、リサーチ中に手に入れた戸板にノミで加工をし始めました。

交流会でお披露目した鉛筆と戸板のケズリカケ(未完成)/(左)は既製品のシュパンバウム

木材が材料として家具や道具として人々の生活の中で使われている。現代の生活の中にある木(原木)を、元の植物としての木の姿に戻り、人間も植物も互いに記憶を取り戻していくような気持ちで鉛筆のケズリカケを作ってみました。と即興で作ったものを紹介していました。
交流会の参加者の皆さんからは、すごーい!私も何か削ってもらいたい!などと高反応でした。

2月25日(金)
新屋散策(渡邉幸四郎邸、高長寿司、民芸パパヤーなど)、県立博物館

街並みや文化財を見るために新屋方面へ。ガラス工房を見学後、渡邉幸四郎邸をご案内頂く。
お昼は高長寿司で、ごろっと大きめな大将こだわりの握りを頂く。お寿司の道具(シャリを入れる桶と押し寿司の型など)も見せていただきました!

最後に以前から気になっていたという「民芸パパヤー」へ。店内に並ぶ工芸品を見ながら、色々なお話を伺うことができました。

午後は、「ボンデンコ」に関する資料を見せてもらうために県立博物館へ。
事前のアポを取って、収蔵している貴重な資料を見せて頂きました。

「祝義棒」「ぼんでんこ」などと呼ばれ、秋田市・横手市などで祭礼に使う梵天を小型にした玩具で、梵天奉納祭の参道で売られていたりしたそう。
「削り掛け縮み」という技法で、細かく削り鮮やかな色で着色されており、特殊な技法が目に見てわかる手工芸でした。
数年前までは横手で作り手が居たが、今は作られていないよう。(今回のリサーチ調べ)


秋田県立博物館収蔵(撮影:臼井仁美)

2月26日(土)
おえだら箕職人・田口さんの自宅、作業場、イタヤカエデの林

滞在前から気になっていた「おえだら箕」。
2日前に思いきって唯一の職人である田口召平さんにお電話してみたところ、突然の電話にも関わらず、快く作業場やお話を聞かせてくれることに。

(左)おえだら箕職人の田口さん

どうぞどうぞと客間に通してくださり、おもてなしを受ける。お茶をいただきながら、事前に見ていた資料を元に質問を。ひとつずつ丁寧に答えてくれる田口さん。
おえだら箕の材料について、その材料採取と素材の加工がとても大変なこと、太平の地域について、角館のイタヤ細工との違いなど、たくさんのお話を伺いました。

こんな風に台を使って削るんだよ。と実演してくださる田口さん
田口さん作の「おえだら箕」

合わせて、臼井さんの作品(ポートフォリオ)も田口さんにご紹介。臼井さんのケズリカケの作品写真を見て、「は〜、じょうずだねー」とキラキラした目で臼井さんとお話をする田口さん。
手仕事・ものづくりを通して、世代や環境も超えて通じ合うお二人のやりとりが印象的でした。

田口さんからは、「狂うほどやりなさい」というお言葉をいただきました。
今日は準備してないから、また来てください。雪が溶けたらイタヤカエデの林にもいきましょうと、優しい笑顔で見送ってくださいました。

2月27日(日)
南外民俗資料交流館、角館樺細工伝承館、八柳商店

この日は少し足を延ばして大仙市方面へ。

道の駅「なかせん」で削り花を見つける

農具・民具などの資料館を見学。道の駅「なかせん」で数日前から並び始めた「削り花」を見つける。
道の駅で売られている野菜に生産者の名前が書いてあるのと同様に、削り花にも生産者佐々木さんのお名前が記されていました。

そのまま角館へ移動。

角館の樺細工伝承館にて、職人さんの実演を拝見。実際に使う道具なども見せていただきながら、材料の採取について、桜の樹皮の種類、工法についてなどお話を伺いうことができました。

オープニング特別事業「200年をたがやす」でもお世話になった八柳商店へもお邪魔しました。


そこにも、蔵にあったという「ぼんでんこ」が!お店に飾られており、思いがけず拝見することができました。
八柳浩太郎さん、慶子さんにもお話伺い、樹皮を刃物で削る体験もさせて頂きました。
貴重な材料で体験もさせて頂き、ありがとうございました!

樺細工の材料である桜の木の皮を刃物で削る様子
木の皮を削った後、光に透かしてみている臼井さん

2月28日(月)
Now Village今村さん、削り花職人の鈴木さんご夫妻 

引き続き、大仙市へ。
滞在前に、now villageの今村香織さんと連絡をとっていた臼井さん。
「秋田に来たら連絡ください。ご案内しますよ!」と暖かい言葉をいただき、今村さんのご案内で「削り花」を制作している鈴木さんご夫婦を訪ねました!

▼今村さんが発行している秋田の手仕事を紹介するフリーペーパー「いま秋田村から」vol.6にて、削り花を紹介しています
https://nowvillages.shop-pro.jp/?pid=152365048

秋田の冬は長く3月はまだまだ寒く冬景色。そんな春彼岸にお墓に供えるのが「削り花」と呼ばれる造花です。 秋田でも2月末ごろから道の駅などで並び始めるようです。

「削り花」を制作する鈴木三郎さん(右)と恭子さん(中) 繁忙期にありがとうございました!


削り花制作の様子(撮影:臼井仁美)

この日、案内してくださった今村さんにもお礼を言いつつ、臼井さんは東京へと帰路につきました。

冬の秋田の風景や気候や街並み、出会った人々など、滞在の6日間で得た気づきを踏まえて、プラン提出が楽しみです。


「まちなか活動プラン」発表は3月21日(月・祝)の公開プレゼンで!
クリエイターのみなさんはオンライン参加になりますが、プレゼンの様子は文化創造館でご覧いただけます(要申込)。
日時|2022年3月21日(月・祝)14:00〜16:30
会場|秋田市文化創造館 2階スタジオB
定員|25名
申込方法|電話(018-893-5656)または下記フォーム
https://forms.gle/NUT3yrhszs7VsbxZ8

【新型コロナウィルスの感染予防・拡大防止対策のお願い】
イベント参加の際には、次の事項についてご協力をお願いいたします。
・手指の消毒にご協力ください
・マスクの着用をお願いいたします
・咳エチケットにご協力ください
・発熱、咳込みなどの症状がある方は参加をお控えください。

お問い合わせ

秋田市文化創造館(担当:岩根・石山・藤本)
TEL::018-893-5656 
E-Mail:program@akitacc.jp
〒010-0875 秋田県秋田市千秋明徳町3-16
開館時間:9:00〜21:00
休館日:火曜日(休日の場合は翌日)、12月29日〜1月3日

移動中に見た秋田の風景