「観察する」プロジェクト
身体0ベース運用法 滞在レポート
リサーチ期間:2022年8月13日〜8月25日
秋田に暮らす人々やクリエイター、専門家が交わり多様な活動を展開するプロジェクト「PARK – いきるとつくるのにわ」。「観察する」「出会う」「育む」「残す」の4つのプログラムを通して、秋田の文化的土壌をたがやしていくことを試みます。
「観察する(クリエイターによるリサーチと表現)」ではつくることを日々実践し、日常の暮らしをユニークな視点で観察しつづけるクリエイター・アーティストが秋田市中心市街地を拠点としたプロジェクトを展開します。8月13日〜8月25日には、参加クリエイターの「身体0ベース運用法/安藤隆一郎さん」が秋田県内を周り、秋田の民藝や秋田文化のリサーチ、ワークショップを行いました。今回はその滞在をレポートします。
8/13 大阪→秋田へ
はるばる大阪から秋田に車で12時間かけてやってきた安藤隆一郎さん。今回はご家族で秋田にこられました。こどもたちも元気いっぱいです!
8/14 伏伸の滝、美郷町町民の森、美郷町歴史民俗博物館、やぶ前訪問
午前中、「伏伸の滝」へ寄ったあと、美郷町へ行き「観察する」の参加クリエイターでもある、わいないきょうこさんの手料理を「町民の森」で味わいました。その後、民藝の資料館である「美郷町歴史民俗博物館」へ赴き、たくさんの民藝品を拝見しました。さらには、わいないさんが運営している「やぶ前」を見学させていただき、充実した1日となりました。
8/15 ワークショップ準備、民芸パパヤー訪問
午前中は8/22に行う「身体0ベース運用法ワークショップ/野菜身体測定会」の準備を行いました。準備の最中にインスタグラムで工芸品販売のお店をリサーチ。新屋にある「民芸パパヤー」さんの投稿になんと!以前から気になっていた樹皮細工が紹介されていました。善は急げとワークショップの準備を切り上げて、「民芸パパヤー」さんへ向かいました!
「民芸パパヤー」さんにて、店主の坂本さんから樺細工と樹皮細工についていろいろと教えていただきました。おいだら箕職人の田口召平さんや樺細工の「八柳」をご紹介いただきました。
8/19 油谷これくしょん、秋田県立博物館、別館・旧奈良家住宅訪問
朝から金足にある「油谷これくしょん」を訪ねました。安藤さんが以前から気になっていた木の岐を中心にリサーチ。あまり見たことがない雪べらなどさまざまな資料をみせていただきました。
午後はさまざまな民具を収蔵している「秋田県立博物館」へ。普段はみることができない収蔵庫や別館収蔵庫で東北の民具、農具を解説いただきました。さらに秋田県内の研究者をご紹介をしていただき、次のリサーチの手がかりになりそうでした。
8/20 新屋猟友会へのインタビューの実施、秋田県立射撃場訪問
新屋猟友会のみなさんのお仕事に同行させていただきインタビューを行いました。こどもの頃に蓮のような大きな葉を使ってキャンプしていたことや、カエルを丸呑み!していたなどのすごい体験談をお聞きしました。
「秋田県立射撃場」の運営をされている佐藤恵次さんに、秋田市内近郊と秋田県でも雪深い地域の狩猟の違いを説明していただきました。また、こどもの頃に動物を獲っていたこと、そこからの時代の変化などお話をお聞きしました。「鴨狩のあとにみんなで鴨鍋をするのがいいんだ」と次回鴨狩においでとお誘いをいただきました!
8/21おいだら箕職人の田口召平さんの作業場、マタギ資料館訪問
「民芸パパヤー」の坂本さんから、おいだら箕職人の田口召平さんをご紹介いただき、田口さんの作業場を訪れました。今回の訪問では材料の採取方法、つくりかた、樹皮の特徴など本当に丁寧に教えていただきました。
さらには、田口さんの作業場には自ら制作した箕や樹皮細工以外にもさまざまな民具がありました。資料館や博物館で見たものが実際にあり、使い方のレクチャーまでしていただきました。
午後からは秋田市から車で2時間かけて北秋田市の「マタギ資料館」を訪問しました。「マタギ資料館」には、さまざまなまたぎ資料を展示されていました。根子のまたぎの話や道具、またぎの言葉など興味深いものがたくさんありました。
8/22 身体0ベース運用法 / ワークショップ「野菜身体測定会」開催
身体の大きさを測るセンチやメートルを、ごぼうやにんじん、きゅうり、パプリカ、じゃがいもなど、身近な野菜に置き換えて測ってみることで、自分の「からだ」をいつもとは違う尺度で測るワークショップを開催しました。
参加者がそれぞれ持ってきた野菜を使って身体測定をし、紙に野菜をスタンプして「実寸大の自分」の身体図が出来上がりました。
写真 : 坂口聖英 Photo : Masahide Sakaguchi
8/24 秋田県森林学習交流館「プラザクリプトン」の学習交流の森訪問
この日は秋田県森林学習交流館「プラザクリプトン」の学習交流の森へ。インストラクターさんの案内で森の木の実の活用術や木々と動物、虫の関係など教えていただきました。
今回のリサーチでは人が山とどのように関わり、秋田の風土に合わせて人々がどのような道具を作ってきたのか、そして時代の流れとともに自然や道具との向き合い方の変化を感じたリサーチでした。
「身体0ベース運用法」の今後の展開では、山での素材収集の技術や道具の作り方を秋田の職人さんから学ぶこと、そして自ら山に入り、どのような木々や植物で道具が作れるのかを実践する予定です。秋田に昔から存在していた「人」と「山」と「道具」の関係性、この関係性に着目している「身体0ベース運用法」の活動の展開にご期待ください。
▶︎11月の滞在レポートはこちら
Profile
身体0ベース運用法(安藤隆一郎)
2016 年より染色作家 安藤隆一郎が始動した「ものづくりの視点」から考える身体論。「身体」と「もの」との関わりから生まれる感覚、運動、機能を「0」から見直し、人間が本来持っている「身体」の運用法を見出す。その「身体」とは医学やスポーツといった専門的なものではなく、私たちの身の回りにある「身体」のこと。身体0ベース運用法はアートが持つ多様なツールを使ってそれを翻訳し、伝えることで、「身体」の消えゆく未来へ向けてその可能性を問い直す。これまでに体験型インスタレーションの制作、発表やワークショップなどをおこなう。2021 年より、京都府亀岡市を拠点に不要民具を救出し、活用するプロジェクト「民具BANK」を立ち上げ、地域に伝わってきた「身体」を見出すことを試みる。安藤は1984 年京都生まれ、大阪在住。2009 年京都市立芸術大学大学院工芸科染織専攻修了。現在、同大学染織専攻講師。(撮影:松見拓也 提供:京都市立芸術大学)
テキスト|山本美里(PARK – いきるとつくるのにわ プログラム・コーディネーター)
▶︎「PARK – いきるとつくるのにわ」についてはこちら