クリエイター・イン・レジデンス 2022
「滑琴狂走曲 in 秋田!(カッキンラプソディー・イン・アキタ)」
おおしまたくろう/サウンドマン
「滑琴」とは、スケートボードにエレキギターの弦・ピックアップを取り付けた自作楽器。道の凹凸や滑り方によって様々な音を発する滑琴を介すことで、目で見たり、ただ歩くこととは違った方法でまちの特徴を体感することができます。
まちなか活動プラン「滑琴狂走曲 in 秋田!(カッキンラプソディー・イン・アキタ)」では、2023年1月のパフォーマンスイベント開催に向けて、雪に対応した滑琴や音響装置の開発、滑琴の体験会を進めていく予定です。
おおしまさんの活動に通底しているのは、「ノイズ」と「ユーモア」です。明瞭ではないもの、社会規範から外れたもの=ノイズを取り除くのではなく、そのまま生かすには・ノイズの面白みを伝えるにはどうすればよいのか。音楽・遊びやユーモアを介することによって、ノイズを取り除くべきものとしてではなく、世界の豊かさとして読み替えることができるのではないか。そんなことを考え、伝えるべく活動しています。
滞在での気づき
冬の秋田市は、積雪により車道と歩道などの境界線が曖昧になっていた。一方で、融雪歩道の整備の有無によってエリア別の優先度のようなものが視覚化されていた。雪は街の境界線を隠すこともあれば明らかにすることもある。ルート譜を作曲することは街の境界線を意識的に操作することであり、演走してマッピング譜として記述することは新たな線を引き直すことのように思えた。
(おおしまたくろう/2022年1月の滞在での気づきより)
▶︎ 2022年1月の滞在レポートはこちら
概要
「滑琴狂走曲 in 秋田!(カッキンラプソディー・イン・アキタ)」
内容|
■パフォーマンスイベント「滑琴狂走曲 in 秋田」
「雪中演走」と「室内道楽」という2つの新曲を発表する。
雪中演走(Rhapsody in Snow)は、冬の秋田市を舞台に作曲したルート譜(※)を演走する配信プログラムである。滞在中、雪により街の境界線が引き直されていることへの気づきが発想のきっかけとなった。雪道でも走行できるように、ダートウィールを使用したり、スノーボートをヒントとした機構を考案して雪上専用の滑琴を開発する。これまでの滑琴の活動で意識してきた「パブリック&ステルス(公共の場でこっそりと)」を、冬の秋田市と関連づけたパフォーマンスである。
(※)走行ルートを記述した図形楽譜
室内道楽(Street Chamber Music)は、地元のスケーターN氏の滑琴の試乗を経て考案された「室内での演走」を意味する造語である。野外での演走に比べてステージパフォーマンスとしての側面が強く、大きな音量でのスペクタクルな演走を目指す。室内楽の形式に則り、地元のスケーターにご協力いただき、複数名での演走を行う。また室内道楽の空間を構成するにあたり、スケートボードのセクション(障害物)でありながらギターアンプとしての機能を持つ音響装置を開発する。
■滑琴の体験会
滞在中の交流会ではスケートボードに触れたことがない人が多い印象だったので、滑琴を通してスケートボードへの理解を深めていただき、スケーターと住民の共生の一歩となることを目指す。
スケートボードは五輪競技に選ばれるほど人気の高いアーバンスポーツであるにも関わらず、街では排除の対象(ノイズ)となっている。わたしはこれまで、ノイズをユーモアに変換して社会に向けて表現してきた。本プランは音楽や楽器の名を借りた、市民とスケーターの対話の最初の一歩となるだろう。いずれは真面目な議論の場も必要だが、最初の一歩は「ジョイフル」を大切にして、スケートボードの喜びや街の線を引き直すことの面白さを目一杯表現したい。(おおしまたくろう)
実施スケジュール|
5月14〜16日 | 秋田訪問 | 音響機材テストや協力者探し |
8月下旬(予定) | パフォーマンステスト | パフォーマンステストやセクション制作 |
1月 | パフォーマンス | 文化創造館や秋田市中心市街地でパフォーマンスイベント公開 |
主催|秋田市文化創造館
〈新型コロナウイルスの感染予防・拡大防止対策〉
新型コロナウイルスの感染予防・拡大防止のため、下記の対策を行なっています。
・来場の際にはマスク着用をお願いし、スタッフもマスクを着用します。
・会場にはアルコール消毒液を設置します。
〈来場されるみなさまへのご協力のお願い〉
・発熱等の風邪症状や息苦しさ、味覚・嗅覚の異常などを感じる場合は参加を控えてください。
・参加にあたっては、その他必要な感染防止対策に努めてください。
Profile
おおしまたくろう
PLAY A DAYをテーマに、身近な道具を改変した楽器の制作と、それらを組み合わせた少し不思議なパフォーマンスを行う。音楽や楽器の名を借りた遊びやユーモアによって社会の不寛容さをマッサージする。The Medium Is The Massage LIVE!!!!(DOMMUNE/2017)、サウンドパフォーマンス・プラットフォーム2018(愛知県芸術劇場/2018)、Skateboard meets Electronic Guitar おおしまたくろう楽器展 #1 滑琴(かっきん)(FIGYA/2019)、ホリデーパフォーマンスvol.5:おおしまたくろう(ロームシアター京都/2020)、みなと A GO GO!2021(港まちポットラックビル/2021)、おおしまたくろう楽器展#2 滑琴の耳奏耳(かっきんのみみそうじ)(パララックス・レコード/2022)
過去の作品
クリエイター・イン・レジデンス
秋田市文化創造館が主催事業として行う「クリエイター・イン・レジデンス」では、秋田県内外から招聘された多様な分野の専門家やクリエイターが秋田市文化創造館に滞在し、市民の創造力を刺激する実験的なテーマに取り組みます。2022年度は、公募「SPACE LABO 2021」にて採択された2つのまちなか活動プランの制作・発表を行います。
臼井仁美/アーティスト
「やまは蔵、まちの原木、ケズリカケの木々」
おおしまたくろう/サウンドマン
「滑琴狂走曲 in 秋田!(カッキンラプソディー・イン・アキタ)」