トークイベント レポート
「土地を味わう、活かす食事」(ゲスト:渡邊健一さん)
日時|2024年11月8日(金) 18:30-20:00
秋田に暮らす人々やクリエイター、専門家が交わり多様な活動を展開するプロジェクト「PARK – いきるとつくるのにわ」。「観察する」「出会う」「育む」「残す」の4つのプログラムを通して、秋田の文化的土壌をたがやしていくことを試みます。
「出会う」では、さまざまなゲストを招いたイベントを通して、新しい視点や風景と出会うことを目的に、今年度はこれまでトークイベントや秋田市中心市街地でのパフォーマンスフェスティバルを行ってきました。
さる11月8日、にかほ市のレストラン「Remède nikaho」のシェフ・渡邊健一さんをお招きし、トークイベント「土地を味わい、活かす食事」を開催しました。「料理」を起点に、非常に多岐にわたる渡邊さんの活動の源にある思いを、たっぷりとお伺いしました。
渡邊:秋田の最南端のにかほ市に、レメデニカホはあります。
もともと、ある企業のゲストハウスとして使われていた建物で、取り壊しが決まっていたところにストップをかけた別企業の社長さんからご紹介をいただきました。当時私は東京にいたんですけど、お話をいただいてから半年くらいでさっと決めて、ソムリエの村上清香と二人で移住してきました。というのも、その社長さんの想いが、私たちが普段から考えている「食」を通して世の中を良くしたいという想いと一緒だったからです。秋田県は健康寿命が短いなどあまり健康的なイメージがない。そんな秋田で、健康かつ楽しい食を発信できたら、と。
今年と昨年、レメデニカホは、「ゴ・エ・ミヨ」というフランスの美食ガイドの日本版に掲載していただきました。同じフランスの美食ガイド「ミシュラン」は、特に料理の評価を星の数で評価しますが、「ゴ・エ・ミヨ」の評価は「予約の電話から見送りまで」のレストラン全体を評価すると言われています。秋田市ならまだしも、にかほという場所にまで調査に来てくれたことが嬉しいです。
「レストラン」を飛び出して、ちょっと変わった活動もしています。
この写真は昨年、出身の潟上市で開催された「秋田CARAVAN MUSIC FES」にフードトラックで出店した時のものです。フェスのホストである高橋優くんにちなんでメガネをあしらってみたら、お客さんにけっこう受けました(笑)
こちらはにかほ市の中学校での授業の様子です。
「食育」というほど一般的な内容でもないし「体験学習」でもない。そういう意図ではなく「こういう大人もいるんだよ」と、人生の選択肢を増やすというか、私たちが料理を作る思いや意図という、内面的なものを伝えたいと思い、にかほ市内のすべての中学校で毎年やっています。
ウェブサイトで発信しているレメデジャーナルは、私たちがお世話になっている生産者さんたちや、お店のメニューのカバーを作ってくれている革職人さんなど、様々な形でレストランに携わっている人たちをご紹介したいと始めました。
地域の生産者を紹介するサイトってほかにもたくさんあると思いますが「レメデニカホがお勧めします」と発信することは、その責任感や説得力が全く違うと意識しています。信頼する生産者さんたちとお互いを高め合っていけたら、という思いがあります。
「ニカホノサキ」という、にかほで活動している他業種のメンバーが集まる組合をやっています。私とソムリエの村上清香、にかほの酒蔵「飛良泉」の齋藤雅昭さん、佐藤勘六商店の佐藤玲さん。勘六商店さんは酒屋ですがにかほの特産であるいちじくも手がけています。もう一人、地域おこし協力隊としてにかほに移住してきた國重咲季さん。この5人で、現在3つの事業をやっています。
にかほ市の魅力を伝えるためにできることとして企画したのが「野外レストラン」です。
会場は、象潟の道の駅の裏手にある日本海を望む芝生広場で、なにより夕陽が綺麗です。
今年で2回目でしたが、今回は象潟の花火大会の日に開催しました。夕陽が沈むとそこに花火があがって… お客様が羨ましいと思うほど素晴らしかったです。
地元の食材をつかった料理やお酒はもちろん、地元の民俗芸能の番楽を観ていただいたりもしました。スタッフは全員にかほの人たちです。市役所の人、農家さん、漁師さん、牧畜農家さん…みんな、自分たちのまちをの良さを知ってもらいたいと集まった有志。いわゆる接客のプロではないですが、お客様たちはそのことにまったく気づかなかったどころか、スタッフと一緒に記念撮影する方もいらっしゃるほど、そのもてなしを喜んでおられました。
もしもこの企画を、場所を変えて五城目でやるとしたら、五城目の人たちとチームを作りたいなと考えたりします。スペシャリストを呼ぶよりも、地域の人たちでやることによって、それぞれの思いが活かされてさらに素敵なレストランになるだろうと。
2つ目の事業は商品開発です。
こちらは飛良泉の酒粕と、にかほの特産品・いちじくのブラウニーです。酒粕の廃棄・活用は全国の酒蔵さんが抱えている問題で、つまり日本が抱えている問題でもある。でも実は酒粕ってその日本酒よりも身体にいい。だからこそなんかできないかなと思って。で、たどり着いたのがブラウニーでした。酒粕が苦手な方も美味しく召し上がれると思います。これも、地域の特産を活かしたお土産作りとか、「ニカホノサキ」の商品だけが売れればいい、だけではなくて、広まってもらえればいいなっていうのがまず大前提なんですよ。たとえば、全県30蔵とその場所の特産物と掛け合わせたブラウニーのバリエーションがあって、それをセットで販売する、みたいな感じで秋田のお土産にできたら素敵だなと… その起爆剤というか、スタートを切るイメージでつくった商品です。
3つ目は高齢者用のフレンチです。最初は、コロナ禍で入院してしまった祖母に食べてもらいたいという思いがきっかけでした。
聖霊女子短期大学の先生方のご協力のもとつくったもので、オンライン販売も行っていますがまだまだ開発中というか、ブラッシュアップしていきたいなと思っています。
レストランだけで料理をしていると、どんどん自分が狭くなっていくんですよ。料理人として、素晴らしい料理を作りたいって思いは大前提であるんですけど、それだけで終わりたくない。 せっかく料理を作るのなら、限られた人たちだけの評価や幸せのためじゃなくて、できればもう、生まれたての赤ちゃんからご高齢の方々まで、すべての人たちに何かしらの形で幸せを作り出せる料理をしたい。それでこそ料理人じゃないかっていう思いがあります。そして、全国の料理人たちの方たちに、こういう動きが広がって行ったらいいなという願いが一番です。
渡邊さんが秋田商業高等学校の授業で開発された、九条ネギソースのショートパスタを参加者の皆さんに味わっていただきました。九条ネギを栽培された秋田市の農家・SENTEの沢田石さんのお話も伺えて、さらに味わい深く楽しめました。
SENTE・沢田石さん:47都道府県で一番ネギの消費量が多いところって秋田なんです。 では秋田で年中美味しいネギが食べれるかというとそういうわけじゃなく、夏はどうしても硬いネギができてしまう。秋田でおいしいネギが提供できないかなと考えた時に、九条ネギに出会いました。もともと京野菜ですが、柔らかくて優しい風味が特徴なので、このソースで味わいを楽しんでいただけたらなと思います。
後半は、文化創造館の藤本が聞き手として加わり、もう少し深掘りしたいトピックについて話したり、そして参加者の皆さんから募集した質問にお答えいただきました。
「レストランへようこそ!」
藤本:渡邊さんにとって「レストラン」という場があること、場を持つことについてのお考えや、具体的なエピソードがあれば伺いたいのですが、いかがでしょう?
渡邊:「レストランとは」というと「美味しい料理があって、その空間と時間を楽しみ、癒される場所」というのが一般的だと思います。それももちろんありますが、私にとってはもうひとつ、レストランとは「まちをつくるもの」という思いがあります。
お料理の世界に入って一番最初に憧れたレストランは、「トロワグロ」というフランス中部の田舎町にぽつんとあるレストランです。「トロワグロ」は、55年にわたり(現在も)三つ星を守っているお店で、私は学生時代に旅行で行って食事をしたことがあるだけですが、本当に素晴らしいレストランでした。
小さな田舎町に世界中からお客さんが訪れるので、宿泊業が成り立ち、生産農家の方々が成り立ち、クリーニング屋さんが成り立ち… 小さなレストランを起点に、ひとつの「まち」が成り立っているんです。
レストランってもしかしたら、まちづくりの第一歩にもなれるんじゃないか。そして、もともとあるまち(の魅力)を一つずつ組み立て直すこともできるんじゃないか。私の思う、レストランのあるべき姿です。
藤本:このトークの前に、スタッフでレメデニカホに伺いました。
秋田市から車で一時間くらいかけて行くのですが、「レメデニカホ」に行くぞ!という気持ちの高揚感であったりとか、道中に見た風景が、ちゃんとレストランの食事の中に投影されている。そして、行く前と後で、にかほっていうまちに対しての自分の視野が全然違うんですよね。それくらい大きく印象を変える窓口になっている。こういうレストランがあるんだなと実感しました。
渡邊:予約をいただいた時にも「予約をした時点から、レメデニカホがもう始まっている」という言葉をいただいて、シンプルに嬉しかったです。 そう思ってもらえるレストランでありたいんですよ。 社会づくりに貢献する以前にまず、誰もが認めるしっかりしたレストランであるという大前提があってこそ説得力があるわけで、そこはしっかりと押さえながらも、私たちはレストランをやりながらレストラン以上のことをやりたいなと思っています。
「風景がよみがえるような料理」
藤本:この言葉は、お店にお伺いした時にお話いただいた中でも特に心に残りました。
渡邊:お客様には、旅行というか、にかほという地域を楽しんだ後にディナーに来てくださるという方が少なくないです。そのなかであるお客様が「今日見てきた景色が思い浮かぶような料理だね」と… 今日の思い出の集大成・アルバムみたいだね、というお言葉をいただいたときに、私たちが目指す料理、レストランっていうのはそこだな、と思ったのです。
味が美味しいのは当たり前なので、記憶に残るものを作り出したいなと。そして料理に限らず、お飲み物もそうですし、お店の雰囲気づくり、音楽選びもですね。それはソムリエの村上が担当していて「流れている音楽もお料理とマリアージュされているね」とお褒めいただいたこともあります。
藤本:レストランを形づくることにおいて、にかほ市にあるということが、どういう風に関係していると思われますか?
渡邊:今でも、いつ秋田市に移転するの? とお誘いをいただきますが、私たちとしては全く動く気はなくて。
にかほには市場がありません。なので食材はおのずと生産者さんから直接いただく形になるんです。 もちろんすべて手渡しは無理ですが、でもお魚は漁師さんが持ってきてくれます。
これってやっぱり東京とか都会ではできない、やらないんです。コストもかかりますし。そうしなくちゃいけない場所だからやっている。しかし、この環境だからこそ生まれる料理だったり、発想ってあると思うんです。そういう意味では、やっぱりにかほじゃないといけない。そして、私たちがこの6年間少しずつでも成長しているのであれば、それはあの場所だったからだったと思います。
藤本:レメデニカホでテーブルに置かれたカードを読んだり、食材のご説明をいただきながらサーブされる時、目の前の一皿が完成するまでの物語やつながりも、お皿に乗っかってきているんだなと、すごく気づきがあった体験でした。
渡邊:そう感じていただけたらうれしいです。
最近、お客様の目の前で料理を仕上げるようにしたんです。温めたり、盛り付けたりしながらお話をするようにしています。このレストランではそうしなければいけなかった、と気づいたというか。
「どっちがやりたいの? 料理を食べてもらいたいの、思いを伝えたいの?」ってもし聞かれたら、結構五分五分ぐらいなんですよね。伝えたいことが伝わらないで食べてもらうのではほぼ意味がないなと思う。なぜなら、伝わらないまま食べていただくのでは、うちだけの利益で終わってしまうからです。でも農家さんや漁師さんの想いが伝われば、そこにも何かが生まれる。じゃあ今度、あの漁師さんからお魚を買ってみようかなとか。
「料理で社会を動かす」
藤本:「料理は最終的なレストランの目的ではなくて、手段なんだ」というお話をされていましたね。自分の生業自体が人生の目的になっている人はたくさんいらっしゃるし、それによって社会に良い効果をもたらしている事例もたくさんあると思います。しかし、渡邊さんが「自分がやっていることはそれが目的ではなく、社会に対して、自分以外の人たちに対してどうつなげていけるか、継承していけるかのために、料理人という能力を生かして取り組んでいるんだ」っていうお話をしてくださったのが、衝撃でした。
渡邊:素晴らしくきれいにまとめていただいて(笑) 本当その通りです。 料理人の先輩たちに怒られるかもしれないですけど、私にとっては料理は手段で、最終着地点ではないです。 一生やり続けることという意味では最終着地点になるかもしれないですけど。
「社会を動かす」にはいろいろ種類がありますが、ひとつだけお話しすると、同じ飲食業界の次世代を担う後輩たちのために「レストラン」が成り立つ土台を作っておきたいんです。 レメデニカホができたとき、秋田には、少なくとも自分と同世代がやってるレストランが他になかったんです。
つまり「レストランという文化」からまず広めなくちゃいけなかった。特ににかほでは「フランス料理? 予約制? ナイフとフォークどうやって持つんだ?」っていう方がいっぱいいたんですよ。
今まで一度もフランス料理を召し上がったことがないご高齢の方々が、ナイフとフォークでご飯を食べた、こういうグラスで飲み物を飲んだ、冥土の土産になった、と(笑)それを伝えられたのはすごい。2人で感動してたんですけどね。 でも、それこそが文化を作ること、「外食を楽しむ」という体験を作ることだと思うんですよ。
一生の中で使うお金のうち、車や家を買うだけでなく、日常生活の中で外食を楽しむための予算を、少しだけ取っておいてほしい。そのことを中学生ぐらいから知ってもらいたいです。こう言うと利益追求のようですが、この先景気が急によくなるわけではないし、人口もどんどん減少してきているし、飲食業として、そしてその手前の生産者も、厳しい時代になってくると思います。それを少しでもとどめたい、次世代に繋げていかなければならない。そのためには、厨房の中で料理するだけじゃできないと思うのです。
藤本: レメデジャーナルのページを開くと、素敵な写真と、思いにあふれる文章があって、こういう秋田の一面を知ることが豊かなことなんだなと気づけるコンテンツなんですよね。 料理だけではなく、世界を感受することの豊かさを促す取り組みを、レストランを起点に行っているというところが、新しいなと思います。食にそういう可能性があるとは、今まであまり思えていなかったので。
渡邊:どんなジャンルも同じだと思うんですけどね。可能性というか、今日お話させていただいたことと同じことを、たとえば建設業でもやれるような気もすると思うんですよね。皮細工師さんがやれたりとか、農家さんがやれたりとか。そういう社会づくりというか、世の中づくりの方がこれからはしっくりくるんじゃないかな。まちづくり専門の人がまちをつくるっていうのは、だんだん鮮度がなくなってきているんじゃないかな。それぞれが思いを持って作っていけば、もっともっとリアルなものが出来上がっていくんじゃないかなと思っていて。
藤本:先ほど野外レストランのお話で伺った、地元のスタッフの方たち。レストランのスタッフとしての研鑽があったわけではないけれど、にかほの方達が自分から参加したいという思いになれる取り組みはすごいですよね。
渡邊:これは本当に感謝でしかないです。「ニカホノサキ」は5人しかいないんですよ。しかも5人中2人しか飲食業の人がいないのに野外レストランをやってしまおうっていう無謀なところもあったんです。最初は知り合いのシェフを呼ぼうかとか、同業のサービスマンをヘルプでお願いしようという話もあったんですけど、最終的にはにかほ市民だけでやってたんですね。
お客様にはレストラン経験の豊富な方が多いので、どうお感じになるだろうなというのもありました。終わった後で種明かししたのですが、全然わからなかったとおっしゃっていました。それは何故か? 料理を作るのはさすがに無理かもしれないですけど、思いの乗った行動・動きは、技術に勝る時があるのかなと。 地元の方々ってすごいエネルギーを持っていて、学ばされたというか、本当にすごいなと思いました。これは良いものなんだ、 良いものを提供できてるいんだっていう自信とかプライドが、惜しみないサービスにつながるのかな。 本当に、みんなにかほが大好きなんですよ。それが見ていて伝わってくるようなね。
藤本:地元のお祭りが、地域に対しての自信やプライドを継承していく、発露する場になっているように、自分の地域に対しての思いや、働きが乗せられる新たなプラットフォームがあれば、その地域にとってすごく強いコンテンツ・文化になるなと。今のお話にはそういうヒントがあるんじゃないかなと思いました。
ここからは会場の皆さんから事前にいただいた質問にお答えしていきます。(抜粋)
Q.にかほで料理を提供する魅力は何でしょうか?
A.やっぱりあの場所だから伝えられるものというか、思い、背景がありますよね。にかほの食材だけではなく秋田県全域の食材を使っていますから、極端な話にかほでなくても良いのかもしれませんが、それを発信する場所が秋田市のど真ん中じゃなくてにかほって、面白くないですか? そして秋田らしいじゃないですか。
お庭があって、風を感じて、山が見えて、海もすぐそこにあって…そう考えた時に、やっぱりにかほっていうのが一番理にかなっている。本当にその風景とつながっているなっていう感じがすごくするので。
Q.渡辺シェフの人生を変えた一皿は何ですか。
A.何の料理か、どの一皿かっていう、ひとつには絞られてないんですけど、フランス料理を選んだきっかけを話すと…
料理はアルバイトがきっかけで始めたんですけど、やっぱり料理人になろうと思ったきっかけは、大阪の専門学校に行ってからかなと。フランス料理の先生が、ものすごい楽しそうに料理していたんですね。「フランス料理は楽しいよ、すごいよ、美味しいだろう!」みたいな感じで、先生本人が一番楽しそうなんです。その先生の授業がすごい衝撃的で、まずフランス料理やろうって思いました。そのきっかけをくれた先生の作った一皿、そしてその一皿を作る姿ですね。
Q.野菜はできる限り皮も美味しく食べたいと思っています。 どのような活かし方がありますか?
A.いろんな活用の仕方があります。面倒くさくなければ、乾燥させてチップにして食べるような感じ。どうしても活用できないものもありますけどね。
ときに、農家さんが抱えている規格外の野菜をいただくことがあるのですが、うちのお店は2,3席しかないので、活用にも限界があるんです。そんなときはちょっと発酵させて。発酵って難しそうな感じがしますが、塩水につけて時間をおいて発酵させるんです。それを乾燥させて、パウダー状にする。 例えばニンジンでそれをやるとニンジン塩ができます。乾燥させても栄養価は変わらないらしいです。そのままの塩をかけるよりマイルドでコクがある仕上がりになります。
Q.料理教室開催の予定はありませんか?
A.なかなか実現できていませんがやってみたいと思っています。
私がイメージしているお料理教室は調理実習ではなく、作り方ををみていただき、実際に召し上がっていただくタイプ。お客様はテキストを手にしながら見てもらって記憶だけ持ち帰っていただく。もし作りたいなと思ったら、お家でやってみてください、というスタイルです。生産者さんと一緒にキッチンに立つ、そんな料理教室も面白いですよね。文化創造館のキッチンでもできそう。ぜひプログラムに組み込んでください(笑)
Q.秋田の食の特徴と、他県、海外とそれぞれどのような特徴がありますか?
A.秋田って、食に対して弱いなっていうイメージなんですよ。素材の弱さじゃなくて、意識ですかね。もうちょっと言ってしまえば、自治体の意識でしょうか。
たとえば今回、農林水産省の料理マスターズのブロンズ賞をいただきましたが、それを何かに活かしたいなという思いがあって。他県で受賞している人たちは、県と一緒に企画したりとかしていて、そこから派生していろんな職種の人たちに働きかけをしているんですよね。
世界だと、フランスと日本の意識は全くレベルが違います。フランスの三ツ星シェフとかはもう知事より偉いんじゃないかなっていうぐらいの扱いですから。ただ皮肉なのが、食材のクオリティとなると逆なんですね。日本がやっぱり最高峰だと思いますし、農家さんの情熱っていうのが一番強いと思います。秋田の食材ももちろん美味しいものがあり、一次生産者の方々は素晴らしいと思います。
Q.これからのビジョンは?
A.今日お話ししたことを、組み直していくことですね。作る側の意識の熱量をもっともっと高めていきたい。お客さん来ないなーとか野菜売れないなーとか言ってるだけじゃなくて、何よりもまず自分たちが楽しんで、一般の方々をもっと巻き込むぐらいの熱量を持っていかないと。
料理人がなんでこれやってんの? って思われるようなことも、実は料理人だからできるんだよっていえる活動をやっていきたいな。
やってみたいけど、これって邪道だよね、笑われるよねとかっていう思いで立ち止まっていた人っていると思うんですよ。でも、料理人としてもちゃんとやってるっていう説得力を兼ね備えた上でやれば誰にも文句言われないし、そういう人たちがこれから絶対必要になってくるから、っていうことを伝えたい。
今日いらしていただいた人の中にも、世の中に一石を投じる動きをする人たちいっぱいいると思うので、それを今日持ち帰ってもらって誰かに伝えてほしいし、動いてほしいなと思います。
Profile
渡邊健一
秋田県潟上市出身。1979年生まれ。高校時代に飲食店でのアルバイトをきっかけに料理の道へ。大阪の辻調理師専門学校卒業後、東京都内レストランでの修行を経て渡仏。2017年、秋田県にかほ市に移住。翌年、Remède nikahoを開店させる。日々、食による社会構築の可能性を追求し続けながら、地域を磨きあげる一皿をつくり出している。
この土地だからできる料理。この土地を好きになる料理。
2020年 フォーカスシェフ東北代表選出
2023年、2024年ミシュランと並ぶフランス発祥のレストランガイド「ゴ・エ・ミヨ ジャポン」2年連続掲載。
2024年 農林水産省「料理マスターズ」ブロンズ賞受賞。Remède nikaho:https://remede.jp/
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