秋田市文化創造館

レポート

「読んで書く、冬の1DAYワークショップ
本を通じて自分と出会い直す」開催レポート

日時:2024年2月11日(日)10:00 〜18:00
企画:加藤大雅
主催:秋田市文化創造館

秋田市文化創造館では「〜になる」をテーマに、さまざまなトライアルに取り組むプロジェクト「~になるためのトライアル」を開催。秋田に暮らす人々と共に、身の周りに溢れる変化を見つめ、新たな状態へ変わっていくことを楽しむためのさまざまな実験に取り組みます。

この度は、想像する力を使って変化に向き合う実践として、秋田にて本にまつわるイベント企画等を行う加藤大雅さんを迎え、『読んで書く、冬の1DAYワークショップ -本を通じて自分と出会い直す-』を開催。「読み書き」を通して、誰かの表現に学び、自分自身と深く向き合う機会となりました。


2月のよく晴れた三連休の中日。『読んで書く、冬の1DAYワークショップ -本を通じて自分と出会い直す-』には6名の方々が参加してくれました。

お隣の中央図書館明徳館がよく見える準備室Bを会場に、まずは加藤さんから企画のご説明がありました。
「今日はお互いの話をよく聞くこと、そして違いを楽しむことを意識してみましょう」

その後は、参加者全員で自己紹介。普段読んでいるものは漫画、小説、ビジネス書と人によって様々で、書いているものもnote、手紙、短歌、メールと個々に異なった用途・媒体を使っていることがわかりました。

今回のイベントは2部制です。午前の部では短編小説を読み、意見を交わす輪読会を行います。
課題図書はトルーマン・カポーティ 作/村上春樹 訳『おじいさんの思い出』です。

各自、好きな場所に移動して読書します。

『おじいさんの思い出』は、 祖父母を残し両親と引っ越すことが決まった僕とおじいさんとの別れを描く物語です。引っ越しが決まった僕におじいさんは「わしにはひとつ秘密があってな、いつかお前にそれを教えたいんだよ」と言い、秘密は明かされないまま離れ離れになってしまいます。

読み終えた後、再度集まり「おじいさんの秘密とはなんだったのか」「自ら離れていくことと自分が残されることの違い」「「思い出」になるタイミングはいつなのか」などについて話し合いました。
意見交換の後に、もう一度物語に目を通すとまた違った読み方・印象を受けることができます。


午後は「書く」の実践です。
「(子ども時代の)思い出」をテーマに、それぞれでエッセイを執筆します。
何かの気づき・学びを機に自分が変化した出来事を切り取って、誰かに伝える気持ちで文章を書いてみます。
加藤さんからは「書くのに困ったら、物語を縦(時間軸)を広げてみる、もしくは横(空間)を広げてみる、と意識する良い」とアドバイスがありました。

さっそく各自で集中できる場所を見つけて、作業に入ります。
すぐに書き始められた人も、うんうん悩みながら書いた人もいた模様。


3時間後、書き終えたエッセイを持って集まり、スタジオBの好きな場所に掲示します。
会場内をぐるぐるを歩きながら、お互いのエッセイを読み合います。

全員のエッセイを読み終えたら、一人ずつ書いてみた感想やお互いのエッセイについて質問や印象を話し合います。

読んでみて、風景が鮮明に思い浮かぶものや、秘密の告白のようなスリルがあるもの。一番遠い記憶を取り上げた人や等身大の自分を書いた人。自分が書いているときには思いつかなかった切り口や言葉の選び方に発見があり、違いを楽しむことができました。

また自分の思い出も、書いてみることで新たに思い出した出来事や捉え方が変わったこともあり、これからも大事にしたいと思ったり、もうこれで手放して良いと思えたり。

今回のイベントでは、1日を通して「読み書き」にじっくりと向き合う機会となりました。
個人的なことを書いてみることや表現をすること、誰かの表現に学ぶこと。
その面白さや手応えを感じる一日となったのではないでしょうか。
「読み書き」は物事と深く向き合い・捉え直す契機として人生に活きる手頃な技術なのかもしれません。

加藤大雅さんコメント

昨年開催した『BOOK&WEEKEND FES 2023』以来、活動のテーマに掲げている「読み聴き書き」ですが、今回のワークショップではそれぞれの要素が入れ替わり立ち替わり現れました。一編の物語を読み、他者の話を聴き、過去の記憶や感情に耳を傾け、エッセイを書く。そうして集まったテキストをまた読み、感情を共有する。限られた時間の中でのことではありましたが、参加者の方々と同じ時空間を共有できたことをうれしく思います。ありがとうございました。


Profile

加藤 大雅(かとう たいが)

編集と本屋的活動。屋号として「すく」を掲げ、ブランディングや事業開発、まちづくりなど様々な分野で広義の編集を行う一方で、書籍の販売や読書会の開催、本にまつわるイベントの企画など店舗を持たないかたちで活動を行っている。2023年秋に秋田市の交点にて「BOOK&WEEKEND FES 2023―読み聴き書く秋の9日間」を開催。

撮影|星野慧
編集|藤本悠里子(秋田市文化創造館)

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