秋田市文化創造館

レポート

Aokidプロジェクト「10月の『き』」
開催レポート

日時:2023年10月23日(月)〜29日(日)
講師:Aokid(ダンサー・アーティスト)
主催:秋田市文化創造館

ダンサー・アーティストのAokidさんが12月の公演に向けて、秋田に暮らす人々を巻き込んでいくプロジェクト「あときとた」
10月はワークショップとショーケース「10月の『き』」を開催しました。


ワークショップは23日(月)、25日(水)~27日(金)の計4日間開催。はじめに、Aokidさんの過去作品や、影響を受けた映像などを参照しながら、踊りについてのレクチャーを行い、その後、実際に身体を動かしてさまざまなワークを行いました。

参加者は大学生から主婦の方まで、老若男女さまざま。時折プロのダンサーや音楽家の方も加わり、とても充実したワークになりました。毎回顔ぶれが違うことから、集まったメンバーに合わせてワークの内容も柔軟に変えていきました。

会場は文化創造館一階のコミュニティスペースを中心に実施。開放的なスペースのため、学生の方が勉強していたり、他の利用者の姿もちらほら。そんな空間の中で聞こえる音や差し込む光、空気感、さまざまなものを五感で感じながらワークは進んでいきます。

舞台を作る際、そこにあるものや見えるものを「無いもの」として捉えることが多いように感じますが、Aokidさんは目の前のものやそこにあるもの全てを受け入れていきます。

それはお客さんや外の風景も同様です。お客さんを引き連れて屋外でパフォーマンスをするのはわかりやすい例ですが、ストリートをベースにアートやダンスを横断しながら活動するAokidさんだからこそ、約束や決まりを飛び越えて創作ができるのだと感じました。

レクチャーの様子

身体ワークショップの内容

音を出す
相手に向かって手を叩きます。手を叩かれた人はまた別の人に向かって手を叩く。それが連鎖していきます。徐々にスピードを速くしたり、空間に向かって叩いたり。さまざまなバリエーションによって、ダンスが生まれていきます。

ミラーリング
向き合った相手の動きを真似るように踊ります。相手との距離を長く取ってみたり、急に相手を別の人に変えてみたり。相手から離れて、相手との感触を頼りに一人で踊ってみたりもします。

持ち上げる
箱馬のように片手で持て物や、みんなでないと持てない大きな机まで、さまざまなものを持ち上げてみます。重さを感じてそこで生まれる体の反応に耳を傾けてみます。


ショーケース

10月29日(日)、二日間のリハーサルを終え、いよいよ本番です。会場には、ワークショップで描いた皆さんの「き」が集まりました。本番には出られない方々からも舞台美術として描いてもらいました。

Aokidさんからの挨拶の後、音楽が流れAokidさんのダンスが始まりました。出演者の皆さんは「き」を描いています。

木を描き終わると屋外に移動するように促されます。屋外では大きな岩の上で踊る演者の姿。文化創造館の屋外にある印象的な岩に皆で触ってみます。

席に戻ると、演者の方々がゆっくりと会場を歩いています。天井や壁を舐めるように見渡しながら、この空間を捉えていくようです。先ほどとはうって変わって、緊張感が張り詰めています。ワークショップで行ったように身体を全てを空間に耳を澄ます出演者たち。

会場のあちこちから、少しずつ音が鳴り始めました。箱馬や床を叩き、音を鳴らしながら、舞台の中央に集まっていきます。自分が出す音、そして、みんなが出す音を感じながら。

演者の方々の声が聞こえてきました。何層にも重なり、会場に響きわたっていきます。

突然の静寂。

よく見ると、Aokidさんが小さくゆっくりと肩をくねらせるように動いています。

Aokidさんから徐々に動きが伝染していきます。

これはワークショップでも行っていたミラーリングの動きです。相手をよく見て観察して、形だけではなくその雰囲気や息遣いを感じて真似てみます。

その動きは次第に大きく、そして独立した踊りになっていきます。真似をした相手の動きを思い出したり、また別の人の動きを真似てみたり、身体の感触や周りを感じながら。

大きな声を出したり、走り回る方も。様々な場所で新たな踊りや、動きが同時多発的に起こります。

気づけば、箱馬が並び、一つの道が生まれていました。

いつの間にか演者の皆さんは奥へと消えていきます。

照明が全て消え、暗闇に包み込まれました。

「浜辺の歌」が流れ始めました。Aokidさんの指揮に合わせて、踊り始めます。

曲の終わりとともに、拍手が巻き起こります。しかし、まだ終演ではありません。拍手から手拍子になり、会場を大きく動きまわります。

最後はそれぞれの名前を叫んで、終演。


終演後は、観客の皆さんにもミラーリングの動きをレクチャー。

その輪はお客さんを巻き込んで大きくなっていきます。

最初は舞台と客席とが分かれて進んで行きましたが、屋外を取り入れた演出や自由にのびのびと踊る出演者の姿を見て、その垣根が溶けていくようでした。まるで会場がストリート、広場のようになり、普段、館にお客さんとして参加されている方々も一緒になって踊る。そんな忘れられない一時となりました。皆様、ありがとうございました。


当日の映像はこちらです。ぜひご覧ください!

開催日|10月29日(日)18:00〜20:00
会場|秋田市文化創造館2階 スタジオA1
映像撮影|小谷真夕、田島陽
映像編集|田島陽

テキスト|白田佐輔、島崇
写真|伊藤靖史(Creative Peg Works)

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