秋田市文化創造館

インタビュー

秋田市文化創造館パートナー2021

2021年度、秋田市文化創造館は
7組のパートナーと一緒に活動を行っています。
パートナーとは、書類・プレゼンテーション審査を経た
「秋田のまちをおもしろくする企画」を実践する団体。
主婦、会社員、学生、自営業など
さまざまな立場の人たちが、
スタッフ(前田優子、齊藤夏帆、島崇)と
一緒に企画を磨き上げています。
日々どんな活動を行っているのか紹介します。

06 MAP

パートナーによる、まちを楽しむゲームブック『トオリマチ奇譚』が発行になりました。

制作した団体はMAP。秋田公立美術大学大学院 複合芸術研究科に所属する谷口茉優さん、武田彩莉さん、並川詩織さん、安村卓士さんによるプロジェクトです。

「ゲームブック」とはどんなものなのか、発案の経緯や制作の過程を谷口さん、武田さん、並川さんの3人に聞きました。

(左から)並川さん、武田さん、谷口さん


きっかけは大学院の授業

武田 プロジェクトを始めたきっかけは、大学院の授業でした。

谷口 学外の相手(カウンターパート)を見つけて、その団体と連携した何かをつくるという課題があったんです。授業が10月に始まって、翌年の3月に文化創造館ができるときだったので、ちょうどいいねって、文化創造館をカウンターパートと想定して考え始めて。

並川 興味が合うメンバーでグループをつくるのですが、私が情報を集めるツールとして提案した「屋台」に、おもしろそうと集まってくれたのが、MAPのメンバーでした。 屋台があると人が集まってくるので、まちの人の声を聞くコミュニケーションの場として活用しやすいと考えたんです。

屋台を制作する様子

武田 カウンターパートを見つけること以外、テーマは自由だったので、文化創造館を拠点に屋台を引いて、まちの「未分化なもの」を集めるプロジェクトをやってみることにしました。

谷口 人がまちを歩くとき、どういう情報をどういう風に収集してまとめているかを考えているころで、そのころ読んでいた『宇宙船地球号操縦マニュアル』 (バックミンスター・フラー著、芹沢高志訳、ちくま学芸文庫)という本に感化されて、「未分化」に興味があったんだよね。

武田 本には、専門性に特化すると、可能性を狭めてしまうということが書かれていました。

並川 たとえば「落ち葉」は「植物」に分類されますが、どう解釈すれば植物に分化されない未分化になるかを考えるようになったんです。

武田 未分化がどういうことなのか、私たちもまだわからないのですが、落ち葉を「植物の落ち葉」ではないものと解釈するために、落ちている落ち葉をそのまま拾うのではなくて、フロッタージュ(葉の上に紙を置いて、鉛筆などでこすることで形を映し出すこと)をしてみたり、絵を描いてみたり、物語をつけてみたり。違う捉え方でものを考える実験をしました。

並川 最初は大学がある新屋で屋台を引いて歩いてみました。落ち葉のように、自分たちで歩きながら見つける情報もあれば、屋台を引いていると、声をかけられたり、人が集まって来たり、向こうから集まってくる情報もあります。

谷口 そうした情報をまとめるとき、カタログにすると編集作業が入って、どうしても整理しないと読み物にならないけれども、分類せずに冊子としてまとめるおもしろい方法はないだろうかと考えていました。

並川 そうこうしている間に、後期の授業の途中で文化創造館がパートナー事業の募集を始めることを知って、応募してみることにしたんです。

プレゼンテーションの様子

まちのゲームブックをつくる

谷口 「ゲームブック」は、もうひとりのメンバーの安村くんから出たアイデアでした。

並川 ゲームや遊びに興味があって、自身も小学生のときに遊んだことがあるそうです。

武田 ゲームブックは、物語になっている本のことなのですが、読み進めると選択肢が現れて、読む人の選択によって結末が変化するつくりになっています。

「未分化」を考える中で、よくわからないものを、よくわからないまま残す方法として、いいかもしれないと思いました。

ゲームブックに登場するイラスト

谷口 フィクションとして書くことができるので、まちを歩いて「これなんだろうな」と思ったものを「なんだろうな」というまま書いていい。未分化のまま事柄をまとめることに通ずるなと思いました。私たちが歩いたときに見たまちを、そのまま投影できると思ったんです。

並川 リサーチすることではなくて、ゲームブックをつくることをゴールにしてからは集めることが明確になって、動きやすくなった気がします。まちの人にも伝わりやすくなりました。

武田 パートナーになってからは、リサーチの場所も、文化創造館の近くの通町というエリアに絞りました。「歴史もあって、お店もある通町を歩いてみたら」って、文化創造館スタッフの方がアドバイスしてくれたんです。

並川 通町に詳しい方を紹介してもらって、一度まちを案内してもらいました。昔からあるお店を教えてもらったり、気になる建物だったり、歩きながら重点的に取材する場所を決めていきました。

谷口 その後自分たちで何度か通町を歩きました。新たにつくった小さい屋台を引いて。屋台には、図書館で印刷した昔の地図を何枚か貼って変遷を見たり、集まった情報を書き込んでいきました。

武田 みんなすごく話してくれたね。情報誌にするわけではないので、これを聞かなきゃというものはなくて。目的を持たず、ただ話していることが、ゲームブックの大切な要素になったりしています。

谷口 話しかけてくれた人には、どこに住んでいるか、どういうタイミングで通町を歩くかを聞いたりしました。通町のスーパー「せきや」の前で声をかけていただいた人は近所の方で、よく買い物に来るんだと言っていました。その人もゲームブックに登場します。

並川 取材したところは全部出るね。情報誌には必要ではないようなエピソードも盛り込めるのがゲームブックの良さだと思います。

齊藤(スタッフ) 屋台を引かないときは、文化創造館1Fのコミュニティスペースに置いて、エピソードを募集していましたよね。

武田 屋台のところにポストをつけて、質問が書かれた手紙をいっぱい入れておきました。

谷口 おみくじみたいに引いてもらって、そこに書かれた質問の答えを書いて投函してもらうんです。会話みたいになるのが理想で。

並川 「青春はいつ?」とか「最近見た夢は?」とか。ほしい回答があるわけじゃないんですけど、70問くらいつくって、全部に答えが返ってきました。

齊藤(スタッフ) 巡回に行くと、年齢問わず書いている様子をよくみかけました。

パートナーの俳画協会の方も、質問がおもしろいと感じたようで、自分たちのイベントで、「ご意見をお聞かせください」というような堅苦しい質問ではなくて、「自分だったらどんな絵を描きたいですか?」というような柔らかい質問を取り入れたアンケートを制作していました。パートナー同士、いいと思ったのを吸収し合うのはいいことですよね。

新しい形のまちを知るツール

武田 まちの情報集めは10月で終えて、2ヶ月かけてゲームブック『トオリマチ奇譚』を完成させました。挿絵は安村くんが描いています。

谷口 読み進めると、通町を歩いているような、まちが浮かび上がってくるようなものになっていればうれしいです。

並川 まちあるきマップや観光案内パンフレットとはまた違う、新しい形のまちを知るツールになればと思ってつくりました。ちょっとフィクションの目線でも、ノンフィクションの目線でもまちを歩けるようなもの。

武田 2021年度のパートナー事業は12月で終わりますが、もう少し時間があったら、文化創造館で、ゲームブックを使ったワークショップができたら良かったね。

谷口 自分たちでワークショップをやってみたかったという思いもありますし、冊子自体は、私たちがいなくても楽しめるものになっているくらい強度があるものに仕上がっているのが理想です。
誰もがファシリテーションできるものになっていてほしい。
このゲームブックを使って、私たちがいなくてもワークショップを開催してもらえたらうれしいです。

並川 mapは、mobility alternasu projectの頭文字をとって名付けました。屋台をキーワードに集まったメンバーではあるんですが、もともと、「オルタナス」という、「表現の実験場」をコンセプトにしたアートスペースの運営も行っているメンバーでもあって、「表現の実験場」であるオルタナスを動かしていきたいという思いがあるんです。

谷口 卒業して秋田から離れるメンバーもいるのですが、いろんな場所にオルタナスを持っていくようなイメージでmapの活動も続けられたらいいですね。

※オルタナス/Alternasu 
alter=変化するnasu=為す / 秋田市に新たに生まれた表現活動の実験場。不定期で展示やイベントを行うほか、スペースの貸し出しも行っている。問い合わせは各SNSのDMから。 Facebook / twitter

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完成したゲームブック『トオリマチ奇譚』は、文化創造館や通町で配布を予定。こちらからもPDFをご覧いただけます。いずれはゲームブックを使って実際にまちを歩くイベントや、違うまちのゲームブックをつくるワークショップが開催されるかも。今後の展開が楽しみです。

(取材:佐藤春菜 撮影:秋田市文化創造館)

information

秋田市文化創造館パートナー2021
06 MAP

活動内容

●ゲームブック『トオリマチ奇譚』
https://akitacc.jp/uploads/gamebook_.pdf