秋田市文化創造館

レポート

秋田まちなか作戦室
『エキマエ、はじまる。「さんど市」のレポートをつくろう』

日時|2025年10月17日(金)
会場|秋田市文化創造館

秋田に暮らす人々と共に、駅前エリアで行われる催しや文化活動について、取材・発信・提案する「秋田まちなか作戦室」。10月17日(金)には、秋田駅西口駅前芝生広場で開催されたイベント「エキマエ、はじまる。さんど市(10月11日開催)」のレポートを作るための作戦会議を実施しました。

「さんど市」の企画運営を担当するJR東日本秋田支社スタッフや秋田大学の学生たち、出店した方々、開催日当日に会場を訪れた「まちなか作戦室」メンバー、訪れなかったメンバーも交えて、様々な視点から「さんど市」についての振り返りや今後に役立つレポートづくりのために意見交換をしました。

「エキマエ、はじまる。さんど市」とは?

「エキマエ、はじまる。さんど市」は、2021年11月から秋田駅周辺地域の賑わい創出を目的にJR東日本秋田支社と秋田の地域事業者が共同で開催する地域活性化イベントです。
毎月第3土曜日(さんど)に開催されること、そして秋田の幅広いコンテンツを“サンドイッチ”のように織り交ぜることが名前の由来。
10月期のテーマは「秋を楽しもう」。今回は秋田大学地域文化学部 特定地域ゼミの学生たちが中心となって企画・運営。読書・食・文化をテーマに、移動図書館や古本販売、キッチンカーとの連携企画など、秋を満喫できる体験型イベントとして展開しました。

▷「エキマエ、はじまる。さんど市」の詳細は こちら

「秋田まちなか作戦室」がさんど市で行った活動について

「秋田まちなか作戦室」では、これまでの活動を通して寄せられた「駅前の公共空間をどう使いたいか」という意見やアイデアをもとに、秋田駅前芝生広場での過ごし方を実際に試す実践を行いました。
当日は、禁止事項ではなく“やっていいこと”を示す〈OKサイン〉の掲示をはじめ、芝生広場でゆったりと過ごせるようゴザやキャンプ椅子を設置。さらに、この秋開催される「本」にまつわるイベント情報をまとめた掲示板や、駅前での空き時間の過ごし方について来場者の声を集める意見ボードも用意しました。
日常のなかにある公共空間の新しい使い方を、来場者とともに考える時間となりました。

OKサイン
情報掲示板

▷「秋田まちなか作戦室」の詳細は こちら


Step.1|企画者の話を聞く

今回の企画を担当された秋田大学の学生さんたちやJR職員の方にお話を伺いました。

ーー 今回、「読書」をテーマにしたのはどういった意図があったのでしょうか?

丸子さん(秋大生):季節が秋ということもあって「読書の秋、食欲の秋」を思いつきました。最近は本を読む人が減っていたり、季節を感じるような体験を自分から求めに行く人が少ないように感じていて。情報が自動的に入ってくる社会の中で、「自分から体験をしに行く」というきっかけを作るにはちょうどいいテーマだったのかなと思います。

佐藤さん(秋大生):もともと「芝生で本を読んでいる風景っていいよね」という話をしていたのが、この企画のきっかけでした。当日、寝転がったり、お弁当を食べたり、本を読んだりしている人がいて。普段はあまり見られない風景が生まれていて、芝生の活用という点でも手応えを感じました。

鈴木さん(秋大生):これまで芝生広場で「本を読む」というイベントはなかったかと思います。ぽぽろーどから見える景色としても新しいものになるんじゃないかという期待もありました。

ーー 読書や食事をしている光景自体が、芝生広場の可能性を伝えるデモンストレーションにもなっていたように思います。JRとして、今回の秋田大学生立案の企画をどう見られましたか?

高橋さん(JR秋田):「さんど市」は、地域の事業者の方々が自分たちの活動を知ってもらうための場として始めた取り組みです。広場自体は基本的に営業目的では使えない場所なので、地域の方々が自発的に活用していくためのきっかけづくりとして開催しています。その中で、学生の皆さんから「芝生で読書をするイベントをやりたい」という提案があり、少し違う角度からの試みとしてぜひやってみようと思いました。私たち社員だけでは「人が集まるか」という点で踏み切れなかったかもしれませんが、学生の自由な発想が実現を後押ししてくれた部分もあります。

ーー 今回、出店者や来場者へのアンケートの中で、「また参加したい」「買い物をしなくても芝生で過ごせるのがよかった」という声が多く聞かれました。芝生広場が“もっと自由に使っていい場所”であることをまだ知らない人も多いように思いますが、今回のような試みが、その認識を少し変えるきっかけになったのではないでしょうか。

高橋さん:はい。今回のように「さんど市」以外の日にも、地域の方々や出店者さんが自主的にイベントを開いてくれるようになれば、少しずつ駅前の賑わいが広がっていくと思います。広場の利用には特別なお金はかかりませんし、JRとしてもサポートしていきたいと考えています。

Step.2|出店者の話を聞く

今回のさんど市で出店者として参加していただいた方々にお話を伺いました。

中央図書館明徳館|
読書ブースの設置と青空おはなし会を実施しました。たくさんのご家族に絵本を読む時間を楽しんでいただけたようで良かったです。また高校生や大学生など若い世代に図書館や読書に興味をもってもらう機会になりました。会場内に青空おはなし会をお知らせするポスター等があれば良かったと感じました。

TAYORe:SHOP|
本屋としての出店自体が初めてだったのですが、多くの人が足を止めてくれ、嬉しい驚きでした。実際売上も良かったです。駅前芝生エリアに人の流れが生まれていることを感じました。駅前芝生エリアは使い方によって、とても可能性があるなと思いました。

きのうちふるぎ、|
普段のお客様をはじめ、県内外各地の方とお話しすることができました。あいにくの天気でしたが、雰囲気はかなりよかったです。ぽぽろーどから「何かやっているな」と気づいて遊びに来てくれた方も多かったです。販売をする出店者だけでなく、ゴザを使ってその場を楽しむような人やコンテンツがあることがすごく重要だと思いました。

出店者A|
大屋根下で行われるようなイベントのにぎわいとはまた違い、程良くのんびりできました。良い芝生のせいか、虫がほとんどいなくて安心して出店できました。ただ、寒さと風対策は必要だと思いました。また、もっと他の出店者さんのところに遊びに行けたら良かったです。駅前にこのような広場があることは、貴重だなと思いました。

Step.3|企画者・出店者・作戦室メンバーでの意見交換

企画者による「さんど市」の解説と振り返りを踏まえ、企画者、出店者、まちなか作戦室メンバーのそれぞれ異なる視点から「さんど市」に関して意見を交わしました。


Step.4|「さんど市」が大切にすべきことを考える

意見交換を経て得られた考えや気づきをもとに、
「さんど市、駅前空間の活用において大切にすべきポイント」「より良くするための工夫」について話し合いました。話し合いの中で挙がった意見をご紹介します。

【さんど市、駅前空間の活用において大切にすべきポイント】

親しみやすく、誰でも過ごしやすい雰囲気
・芝生の上で風を感じたり、自分のペースで過ごすことのできる屋外ならではの心地よさがイベントの魅力につながっている。
・ゴザや椅子などの設えが滞在のきっかけをつくり、来場者同士のゆるやかなつながりを生んでいた。

新しい出会いの創出
・駅前という一等地を「1日自由に使える」ことが大きな可能性。
また、無料で参加できることから地域事業者にとって挑戦しやすい機会になっている。

誰もが関われる“ゆるやかな構造”が魅力
・来場者、学生、出店者(秋田に住んでいる人、お店をやっている人、文化活動をやっている人、学生 の属性を示した言い方の方が良いかも)など、いろんな人が関われる余地のあるイベント設計になっている。
・一つの組織が引っ張るのではなく、いろんな人がゆるやかに関わり合う柔らかい運営スタイルが「秋田らしさ」としても機能している。
・こうした関係性が積み重なることで、駅前に新しい風景や価値が生まれつつある。

【駅前空間の活用において工夫できるポイント】

心地よさと賑わいの“共存”を生む設計
・にぎやかに過ごす人と静かに滞在する人、その両方が気持ちよく共存できる空間づくり。
・季節によって、賑わい・静けさ・滞在の仕方を柔軟に切り替える(春夏は賑やか、秋冬は落ち着いた雰囲気など)

 関わりの余地を広げる仕組み
・レジャーシートの持参を促すなど、来場者の能動的な参加を後押しする仕掛けを増やす。
・学生、市民、地域事業者が小さな企画で参加できる体制を整え、“地域の自走”につなげる。
・運営ノウハウを共有し、自分たちでもやってみたいと思える環境を整備する。

見えやすく、入りやすい導線とサイン
・「何をやっているか分かりにくい」課題があるため、ぽぽろーどからでも見えるサインや旗を配置する。
・駅前は多方向導線のため、どの方向からも入りやすい配置・入口の設計が大切。
・「通路」から「広場」へと意識が切り替わる視覚的な工夫をする。

継続的な発信と認知の積み重ね
・SNS・新聞・チラシなど多方面から継続的に情報発信し、認知を少しずつ広げる。
・「毎月第3土曜」「誰でも参加できる」など、定期性と安心感が効果的。

デザイン・サインの試行を続ける
・OKサインを地面やガラスに貼るなど、複数のパターンを試して最適な形を見つける。
・プロ任せではなく、関わる人みんなで育てていく“実験的なデザイン”を取り入れる。


今回の『「エキマエ、はじまる。さんど市」のレポートをつくろう』では、さんど市の振り返りワークを通して、企画者・出店者・そして作戦室メンバーの声も交えながら、多角的に意見を共有しました。
イベントの関係者だけではなく、第三者の視点からの率直な声にも耳を傾けることで、これまで見えにくかった課題や魅力がより明確になり、改めてさんど市や秋田駅前の活用可能性を感じられる時間となりました。
こうした対話から生まれた気づきが、今後の活動や新しい挑戦へとつながっていくことを願っています。

✴︎このレポートは、10月17日(金)に開催された 秋田まちなか作戦室『「エキマエ、はじまる。さんど市」のレポートを作ろう』での参加者の意見や話し合いの内容をもとに作成しています。

撮影|伊藤靖史(Creative Peg Works)
編集|小野地瞳、藤本悠里子(秋田市文化創造館)

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