秋田市文化創造館

レポート

「イラストレーターに聞く、イラストレーターとつくる」
開催レポート

日時:2024年8月11日(日)13:00〜17:30
ゲスト:NOYさん、平石かなたさん
主催:秋田市文化創造館 協力:有限会社金圓

文化創造館では2023年12月から孔版印刷機「リソグラフ」を活用した事業を本格的にスタート。これまでに30組以上の市民にご利用いただき、印刷物の作成に役立てていただきました。
その中でリソグラフの特殊な印刷表現や、イラストを出力するコツなどをプロから学んでみたいというお声が増えてきたため、今回のイベントを企画しました。

「イラストレーターに聞く、イラストレーターとつくる」
夏真っ盛りの8月11日。
イラストレーター、そして原宿にあるスタジオ『STUDIO LE MOND』でリソグラフオペレーターとしても活躍するNOY(のい)さんをお招きし座談会・ワークショップを開催しました。


座談会

前半の座談会は「NOYさん教えて!一問一答」と題し、事前に募集したイラストレーターにまつわる質問にお答えいただきました。
聞き手は秋田市地域おこし協力隊の平石かなたさん。平石さんは学生時代から自主制作の本(通称ZINE)を作っており、創造館のリソグラフを使って定期的にフリーペーパーを発行しています。

事前に募集した質問を抜粋し、NOYさんにお答えいただきました。

Q1.イラストレーターってどうやってなるの?
(平石)私も趣味でイラストを描いています。そういった趣味で描くことと、イラストレーターとして描くことの線引きはありますか。

(NOY)今はSNSがあるんで、アマチュアとプロの線引きがだいぶ曖昧ですね。
ただ依頼主からお金とオーダーをもらうっていうところは違います。僕がイラストレーターと名乗り始めたのは、初めてイラストでお金を受け取った時からです。

Q2.仕事をゲットする方法は?
(NOY)僕は上京したての時、カメラマンのアシスタントをしていてその傍で絵も描いてました。小さなグループ展に参加して、それを見た人からライブハウスのグッズ依頼とか小さな仕事をもらうようになりました。

仕事で受けたものはその都度SNSにも投稿しています。過去の仕事例がSNSにあるとクライアントは安心するんですよね。そこから徐々にSNS経由の仕事が増えてくようになっていきました。今はSNSのDMからの依頼が一番多いですけど、ZINEのイベントや雑誌など様々な媒体で発信したものが仕事に繋がってるなと感じます。

Q3.自分の絵柄をどうやって獲得しましたか?
(平石)きっと迷ってる人がいるんでしょうね。私もこのタイプです。何かを見ながら描くみたいなことはできるけど、オリジナリティを出すのが苦手だから、NOYさんが現在のスタイルに行きつくまでどうやってのか気になります。

(NOY)僕も以前は全然違う絵柄でした。活動を続けていくと描きたい要素が固まってきて、僕はちっちゃいキャラクターがワンサカいる絵が好きなんやなって気づきました。
あとは自分の絵を1回振り返るタイミングは必要やなって思ってます。描いてる時は感覚的なんですけど、時間を置いて改めて見たときに、自分はどういう要素が好きなのか、どういう形や色が好きなのか、客観的に捉えて言語化していくのが大事ですね。

制作年:2020年
制作年:2022年

既存の作品のファンアートを描く事も好きで定期的に描いています。既存のキャラクターなんで、もう大まかなデザインが決まってるじゃないですか。だからそっちは考えなくていいんですよね。そうすると自分の持ち味、例えば線の良さとかが見えてくると思います。

トーク後にはリソグラフの作例を見ながら交流をしました。

ZINE作りワークショップ

ワークショップでは、集まった参加者の皆さんで一つのZINEを作ります。
今回は10名の方にお申し込みいただきました。

原稿作り

イラストや文字、写真を組み合わせて自分だけの1ページをレイアウトします。
リソグラフは色ごとに版を分ける必要があるため、コピー用紙にトレーシングペーパーを重ねて作成します。

実際にリソグラフで印刷した作例を参考にしてイメージを膨らませていきます。
初めは慣れない作り方に戸惑う場面もありましたが、NOYさんからアドバイスをいただき原稿を作成していきました。
線の太さや濃さなどの調整や、色の重ね方など原稿にまつわる質問はもちろん、リソグラフに適している用紙のことなど、制作する予定のZINEについて相談する様子もありました。

製版&印刷

リソグラフには製版と印刷、二つの工程があります。
まずは製版。完成した原稿をリソグラフでスキャンすると、内部で色ごとに版が生成されます。
ここで初めて印刷の仕上がりを確認するのでドキドキです。

製版してみないと、どんな風に印刷されるか分かりません。色の濃度や風合いなど、イメージ通りになるように調整を重ねました。

今回は秋田市にある文具店、金圓さんにご協力いただき、期間限定で青と緑のインクを追加しました。

印刷のリズムでダンシング

製本

用紙を乾かしたら製本作業に移ります。今回は表紙合わせて16ページのZINEを50部作ります。
半分に折り、ページ順に挟み、ホッチキスで中綴じ。分担して作業を進めていきます。まるで印刷所のようです。

こうしてZINEが完成しました!
それぞれが夏をテーマにレイアウトしたページが集まり、一冊の本が出来上がりました。

表紙はNOYさんの書き下ろしイラスト。

《参加者のみなさんの感想》
・リソグラフの作品って、とても魅力的ですね。完成したZINEも最高です!
・リソグラフについて知れたし、NOYさんだけでなく他の人とも話せて楽しかったです。
・手を働かせるのはやっぱり楽しい。もっといろいろ実験してみたいと思えた体験になりました。
・色の濃淡が難しかったけど、何とかなりました。


撮影|伊藤靖史(Creative Peg Works)
構成・テキスト|白田 佐輔

記事

クロストーク「まれびと/風土/日本海」イベントレポート(後篇)石川直樹×伊藤俊治

クロストーク「まれびと/風土/日本海」イベントレポート(後篇)石川直樹×伊藤俊治

1月14日、当館1階コミュニティスペースにて、写真家の石川直樹さんと、秋田市土崎出身の美術史家、伊藤俊治さんをお迎えし、「まれびと/風土/日本海」と題してトークイベントを行いました。お話の後半は、お二人による新刊『秋田 環日本海文明への扉』へとつながる、秋田をめぐる「まれびと」について、さらに日本海文化、北方文化にまで話が及びました。

クロストーク「まれびと/風土/日本海」イベントレポート(前篇)石川直樹×伊藤俊治

クロストーク「まれびと/風土/日本海」イベントレポート(前篇)石川直樹×伊藤俊治

1月14日、当館1階コミュニティスペースにて、写真家の石川直樹さんと、秋田市土崎出身の美術史家、伊藤俊治さんをお迎えし、「まれびと/風土/日本海」と題してトークイベントを行いました。1月1日の能登半島地震の直後の開催となり、お話の前半は、石川さんが日本の来訪神儀礼を一冊にまとめた写真集『まれびと』そして写真集『奥能登半島』にも触れながら、秋田の伝統行事にまつわる、石川さんの写真と言葉によるレポートです。

クロストーク「工芸と天災ーー能登半島輪島市の現状報告と、天災後に作家が何をできるか考える。」イベントレポート(後篇)

クロストーク「工芸と天災ーー能登半島輪島市の現状報告と、天災後に作家が何をできるか考える。」イベントレポート(後篇)

輪島塗師の赤木明登さん、川連蒔絵師の攝津広紀さん、陶芸家の田村一さん、芸術人類学者の石倉敏明さん、そして新政酒造の佐藤祐輔さんをゲストに迎え、トークを行いました。後編では作家の活動支援のあり方や人々のつながり、質疑応答の様子をレポートします。